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受け継がれしもの





フム・・・確か・・・


この、辺りに・・・・・・



あぁ、・・・・・・あった。




フゥーッ・・・



フフッ・・・やれやれ、流石に埃まみれだ。





コーデリア・・・

君がお気に入りだったシャトー・ラトゥール

久しぶりに開けさせてもらうよ。






マルーンレッドの雫がデカンタの縁を滑らかに這い、

深い眠りから目覚めた馨しいブーケがゆらりと立ちのぼる。



地下のワインセラーの奥深くに蔵っておいた、

四半世紀前のヴィンテージ。





運良くというか、ラファエルには見つからずに残っていたよ。

私が今のラファエルの歳の頃か。



よく二人で飲んでいたっけ・・・







・・・あの頃の私は親が敷いたレールに乗ることが嫌で、

自分の道は自分で切り拓きたいと考えていた。



厳しかった父に対しての反発や、薄っぺらな意地を張ってもいて、

家の名前で評価されたくないとアナグラムでペンネームを名乗った。






ホーマー・スヌークド・ブラントローズ・・・





新作を書き上げたときは一番に君に見せたね。

目を輝かせて待っている君に最初に読んで欲しくて・・・




君の笑顔が見たくて何日も寝ずに書き続けた。


・・・でも、なかなか君以外の人には評価してもらえず、

ようやく出版にこぎつけた作品も、全く売れなかった・・・



それでも君は落ち込む僕を慰め、根気強く応援してくれた。






やがて、私が夢をあきらめてペンを折ったとき、

君は寂しそうに涙を見せたね。



私は家のため、君のためにと、自分に言い聞かせて、

心の隅に萎んだ夢を押し込め、鍵をかけた。






・・・後悔はしていないさ。


ただ、違う生き方もあって、

どちらを選んでも振り返ったときに

幸せになれればいいんだって・・・今はそう思う。





約束・・・か・・・





あいつが・・・ラファエルが・・・

私の叶えられなかった夢を引き継ぐそうだ。





もはや、爵位を継がせる事はできなくなってしまったが、

かつての私と君が夢見ていた未来を

ラファエルに託す事ができるなんて・・・ね。





君はあの頃のように眼を輝かせて、

作品が書き上がるのを待っていてくれるのだろうか。




コーデリア・・・君は喜んでくれるかい?


 
19:00 伯爵 ラッセル comments(0)
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